なにがイヤだといって、食べ物を粗末にすることほど見ていて嫌な気持ちになることはない。食堂で出てきたものを残す。買ってきたお弁当にまだ中身が入っているのに捨てる。回転寿司でしゃりを残す。子どもや若い人ばかりではない現象なのが恐ろしい。
農家に生まれた私は、お米は「ひと粒でも1年」と言われて育った。確かにひと粒のお米が口に入るまで、種籾の頃からしっかり1年はかかる。それに売り買い、調理と手間が入り、ようやく口にすることができる。
食べ物に敬意と喜びを持って接しているかどうか。これが人を見極めるための、私の一番たいせつな基準である。
『食べ物さんありがとう』(川島 四郎 /著 朝日文庫)は古い本だけど、タイトルだけでも価値あるものだと思う。